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半個室の少し薄暗い席に着き、とりあえず生ビールを注文した。
そして、目の前には気になる人がいる。
見事に揃ったシチュエーションに、自分の心臓の音が絶えず聞こえてくる。
いかにも恋愛っぽい空気が流れている気がする。
わたしは必死で気持ちを落ち着かせながら、大人の振る舞いを心掛けた。
「何かあったの?」
笑顔で成海くんに問い掛ける。
「就活が行き詰まり気味で……冴木さんに話聞いて貰えば、頑張れそうな気がして」
しゅんと肩を落とした様子は、まるで子犬のようで、わたしの心は撃ち抜かれた。
そんな健気な瞳で見つめられたら……無下に出来ないじゃないか。
「でも、わたし就職のことも美術系の仕事のこともわからないし……鹿島さんに話聞いたりとかは」
精一杯何でもないふりをして答えると、またしても心臓を射抜くような回答が返ってきた。
「……そういうことじゃなくて……精神的なものって……心を許してる人に聞いて貰いたいじゃないですか?」
心を許してる……わたしに!?
さらっと、すごいことを口に出しているぞ、成海くん。
自分の顔が赤くなって来ているのが、鏡を見ずともわかる。
やや瞼を伏せ、考えていたら、言葉が口を突いて出て来た。
「……聞かせて欲しいな。成海くんが何を目標に、どんなことをやっているのか」
成海くんに負けず劣らず、さらっと言ってのけた自分にも驚いてしまった。
これじゃあお互いに、好きだと言っているようなものじゃ──
すると、成海くんは素直に語り出してくれた。
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