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「冴木さんは、俺を子どもだと思ってるだろうけど……」
バレている。
「冴木さんと肩並べられるようになりますから」
ぎくりと冷や汗をかいていると、成海くんが上目遣い気味に、こちらへ視線を送った。
手が触れ合っている今、そんな目で見つめられたら……心臓の音が鳴り止まない。
「だから、納得出来る生き方していて欲しい。莉南さん」
り……
今、名前、呼んだ。
すると更に手に力がこもった。
わたしの熱っぽさも、気付かれてしまいそう。
成海くんは、照れくさそうに視線を外し、もう片方の手で頬杖をついてつぶやいた。
「そっち……行って良いですか?」
「……だっだめ!」
今、顔が真っ赤になっている自覚がある。
目を合わせられなくて俯いてしまう。
成海くんは姿勢を落としてわたしの顔を覗き込もうとしながら、拗ねたように続ける。
「なんで」
「人目だってあるし」
「人目が無ければ良いの?」
「揚げ足取らないで!」
違う。人目とかじゃなくて……わたしの問題が片付いてないから……!
回らないパニック気味の頭で、やっとのことで答えを導き出した。
そうだ。最低限けじめ付けるまでは、何も起こらないようにしなきゃ……。
わたしはそっと成海くんの手を引き離した。
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