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その後もとりとめのない話をしていたら、気付けば0時。
居酒屋を出て走ったが、終電を逃してしまった。
地下鉄の階段を登り地上へ戻りながら、後悔していた。
終電までには帰ろうと思っていたのに。
でないと……断れなくなりそうで──
暗闇の中、街頭の光に柔らかく照らされながら、肩を揺らして息を整えている成海くんと目が合った。
目を逸らせず、しばし見つめ合う。
「……どうしますか?」
「どうって……」
成海くんが、わたしの手首を掴んだ。
「帰したくない」
真っ直ぐに見据えるその目は、真剣な雰囲気を漂わせていた。
「何言ってんの……冗談やめてよ……」
「本気です、俺は」
次の瞬間、抱きすくめられてしまった。
思わず手に持っていたバッグを落っことしてしまう。
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