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「えっ!? 莉南さん今いくつ──……」
ショックだった。
知らなかったんだ……わたしの年齢。
歳も知らずに、あんな押せ押せで来てたの?
そういえば、社員さんが『若い』とか言ってたし……鵜呑みにしてたのかもしれない。
あまりのインパクトに涙は止まったが、沈黙の中で、わたしの鼻水をすする音だけが響く。
また紘希の言葉が頭の中に浮かび上がって来た。
『お前捨てられるぞ』
虚ろな頭ながら、状況を整理しようと試みた。
とにかく、紘希ときちんと別れよう。
話はそれからだ……。
当たり前じゃないか、そんなの。
わたしがいけなかったんだ。安易にふたりきりで飲みに行ったりするから。
そんなわたしの様子を眺めていたであろう成海くんが、口を開いた。
「……安心して下さい。無理にどうこうするつもりないですから」
言葉の真意を図りかねて、そっと成海くんの顔を見上げた。
「頭冷やします。僕就活生だし、専念します。すみませんでした」
その時の、成海くんの寂しそうな顔が、忘れられない。
その後はふたりとも一言も口をきかないまま、別々にタクシーを拾い、帰った。
別のタクシーで帰るのは、前回と同じだったのに、あの時以上に心が離れてしまった気がした。
次の日も、その次の日も、成海くんと顔を合わせることはなかった。
宣言通り彼は、ほとんどバイトに来なくなった。
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