最後の時間

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7月も10日を過ぎた頃。 鹿島さんにお願いされて急にシフトを変更した日があった。 夕方6時前、いつもの様に夜のバイトさん達が集まり始める。 そこに成海くんの姿があった。 久しぶりに顔を合わせた彼は、少し驚いた表情をしていた。 会いたかった。 思わず心の中でつぶやいた自分に照れて、頬が赤く染まってしまいそうだった。 しかし、成海くんは次の瞬間、気まずそうな表情に変わった。 そして、いつもの様に隣に座ることもなく、わたしから一番遠い席に腰掛け、みんなの会話にも必要最低限しか入って来ない。 これは、避けられている──……完全に。 そう気付いた瞬間から、目の前にフィルターがかかったように、視界が暗くなった気がした。 シフトが全く被らなかったのも、何か工作していたんだ。 その後は、全く仕事に身が入らず、終業まで何とか持ちこたえるだけで精一杯だった。 ぼんやりと落ち込んでいる様子を悟られないように、特に成海くんには気付かれたくなくて、必死で気持ちを張り詰めた。 終わりの鐘が鳴り、とぼとぼとエレベーターへ向かう。 ぼんやりしたままビルを出る。 「莉南」 聞き覚えのある声に呼び止められ、思わず振り向く。 この声は……。
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