最後の時間

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「何か……紘希、急に大人びたみたい……」 紘希は少し考えて、笑った。 「諦めたからね」 「諦めた……?」 「ずっと考えて、気付いたんだよ。自分の思い通りに事を運ぼうとか、相手を動かそうとか、考えてたこと。だから、そういうの諦めた。莉南は莉南で、なるようにしかならない」 そうか……諦めて、求めない。だからこそ、醸し出される余裕。 「もちろん、俺に戻って来てくれても良いけど?」 紘希がいたずらっぽく笑う。 「出来ないよ、そんなこと……」 胸が苦しくて、わたしは表情を歪ませた。 たくさん、傷付けた。 争いを避けてきたわたしが、結果的に最後に大きな傷痕を残してしまったのだろう。 「……あのガキと付き合うの」 「どうかな……もう駄目かも。わたしはちょっと、ひとりで生きてく覚悟したかも。実は今、正社員になるべく頑張ってるとこ」 苦笑いすると、紘希が唖然として声を上げた。 「はぁー? ひとりで生きてくって……何のために俺フラれるわけ? 俺といれば、んな将来のこと気にしなくて済むのに」 そうかもしれない。わたしは紘希の反応にクスクス笑ってしまった。 本当、我ながら馬鹿だと思う。 わたしは、眉を八の字に下げて、口元に笑みを浮かべた。 それから、胸元を押さえて、深呼吸した。 紘希を真っ直ぐ見据える。
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