407人が本棚に入れています
本棚に追加
/75ページ
そのまま盆に突入し、センターは営業していたが、人もまばらな日が続いた。
成海くんは実家にでも帰ったのだろうか、全くシフトは入っていないようだった。
盆が明け数日、センター長と課長の口から正社員登用の結果が発表されることとなった。
此処数ヶ月続いた三者面談も、今日は一段と空気が張り詰めている。
「冴木莉南さん。あなたを我社の正社員として」
息を飲み、センター長の言葉を待った。
「採用します。おめでとうございます」
「……っ! ありがとうございます!!」
やった……!
お辞儀をして会議室を出た途端、足取りは軽く、飛び上がれそうな気分だった。
わたし、正社員になることが決まったんだ。
成海くん、あなたが背中を押してくれたおかげで……。
ほどなくして、成海くんの就職が決まったと、噂が広まった。
みんなが盛り上がっている中、わたしは若干落ち込んだ。
わたし、噂で知るなんて……その報告は、本人の口から聞きたかった……。
何だか辛くて、みんなの輪には入れなかった。
成海くんと会わなくなってから、何度泣いてしまったのだろう。
仕事を終え、ビルを出た時、また涙が浮かんで来る。
成海くん、会いたい。
ちゃんと、話をしたい。
連絡先を聞いておかなかったことを、何度も後悔している。
いつでも会えるなんて、高を括って、何もしなかった。
そんな保障はどこにもなかったのに。
次の出社は9月だった。
張り出されたシフト表を確認して、驚いた。
最初のコメントを投稿しよう!