再生

10/14
前へ
/75ページ
次へ
「莉南さん断ちしてたから、今日はいっぱい味わわせて」 味わうって……その言葉に、真っ赤になってしまったわたしの耳を、成海くんがかじる。 漏れ出てしまいそうになった声を、堪える。 「我慢しないでよ、声……」 恥ずかしくて、口元を押さえて首を横に振る。 成海くんの手が、わたしの脚の方へと伸びる。 足首から膝へと、ストッキングの上からなぞられて、ゾクゾクする。 「あの日……莉南さんのストッキング伝線してたあの日」 「いやー! それはもう忘れて……」 あの失態を思い出して、顔を覆う。 「忘れない。あの日チャンスが降ってきたって思ったんだから」 え? よくわからずにきょとんとしていると、成海くんが語り始める。 「莉南さんに近付くチャンスが俺にも来たって思った。同じグループになれたことも、その日にあんな近付くキッカケが出来たことも」 わたしは成海くんの言葉に驚く。 「だから、ちょっと無理してでも莉南さんの心臓揺さぶってやろうと思って。我ながらすげー恥ずかしいことやったなって」 赤くなった顔を腕で隠す成海くんが可愛くて、今もわたしの心臓は充分揺さぶられている。 「あの日から始まったんじゃなかったんだ……? そんなこと思ってたなんて……知らなかった」 わたしも釣られて赤くなりながら返すと 「初めて言ったもん」 成海くんはいたずらっぽく、少し舌を出して見せた。 「前のグループいた時、1回だけ喋ったんだよ、覚えてないだろうけど。席離れてるし仕事上の関わりもほとんどなかったし……」 成海くんが、わたしのブラウスのボタンをゆっくりと外し始めた。
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!

412人が本棚に入れています
本棚に追加