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扉を開くと、そこには妖精だけでなく、人間たちの姿もあった。
作業に集中する人たちが少なくないようで、金属音やカシャ、カシャ、という何かがこすれるような音が、そこら中から聞こえてくる。
「お、職人コースの新入りだね?」
いきなり背後から声がかかり、私はびっくりして飛びのいた。
「そんなに驚かなくても……僕は素材師のムース。ここの担当だよ。よろしく!」
人間でいうと30代前半くらいの妖精だろうか。
髪は黒、男性の割に長くしていて、後ろで1つに束ねている。
瞳の色も黒。日本人に近いが、肌は白く、服装は黒いローブ。おまけに、手には杖だ。
不思議そうに見ていると、ムースは杖を一振りした。
と、いきなり目の前に、革や布、糸やミシン、木材やのこぎりが現れる。
ただ、現れた場所が悪く、木材の一部が、ムースの頭に当たってしまう。ムースが小さいだけに、かなり痛そうだ。
「イテテ……」
見た目の割に、案外、ドジなのかもしれない。
ムースは、杖を振って、すぐに体勢を立て直した。魔法で痛みを消し去ったのだろうか。
「とりあえず、手慣らしに何かつくってみる? 失敗しても、気にしなくていいし」
一体、これで何をつくれと言うのだろうか。
「あ、他にも必要なものがあれば、何でも出すよ! 材料や道具をそろえるのは、僕の仕事だからね」
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