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お気に入りの、かわいいスカートを履いて、なんとなく着飾ってみる。
ありったけのわずかなお金だけ、小さなポーチに入れて、肩から下げた。
そのまま、私は携帯さえ持たずに、外へ飛び出した。
普段、行かないほうへ、知らない道のあるほうへ……
これでいい。
帰れなくなっても、気にしない。
むしろ、連絡など、つかないほうが好都合だ。
適当に歩き回っていると喉が渇いてくるが、街中なので、コンビニや自販機は、探せばいくらでも見つかる。
人通りが多くなってきた。
どこかの駅に近づいているのだろうか。
でも、帰ってなんかやらない。
私は、人の行かないほうへ、行かないほうへと進んだ。
突然、何かにぶつかる。
「キャッ」
慌てて離れる。当たったときの感触からして、木の柱か何かにぶつかったような印象だった。
見ると、ぶつかったのは、何かの扉の柱らしい。
ただ、そこには奇妙な光景があった。
目の前には、何色もの色がマーブル状になった、光る扉。
けれども、その扉の周りには、仕切られているはずの建物などは、一切なく。
反対側に回ってみても、あるのは、ただ先ほどの続きの道だけである。
まじまじと見ていると、扉が紫色に光り、私は何かに引っ張られたように感じた。
――私を、引っ張っている?――
私は、どうでもいいと思い、扉の意思に従って、その中心に手を触れた。
身体が吸い込まれる。
これでいい。
どうせ、この世界にいても、この先に良い未来など、見えないのだから。
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