ファンシー

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世の中、何が起こるかわからない。よく言ったもんだ。 本当に、本当に心からそう思う。 この世は怪奇、荒唐無稽。事実は小説より奇なりと言えども、まさかここまで面妖になるとは誰もが想像できなかっただろう。 それは2021年。あれは確か4月。日付はどうだったか。新年度を迎えてしばらく経って、社会が浮つきをやや抑え始めた時期だったから、20日前後だろう。 空が、割れたのだ。世界中、至る所で。空に、亀裂が入って。何の比喩表現でもなく、まこと事実に空が割れた。 俺が住んでいる東京の空もまた、例外ではなかった。いや、むしろ酷い方だった。 その時、全世界で72の亀裂が同時に確認されたが、東京の上空に現れたそいつは第3位の規模を誇る大きさだった。 当時、世間は騒いだ。人類史に、いや、史というものが歴され始める前にも無かったであろうこの超常現象に、興奮と恐怖で胸を膨らませた。
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