大切な人

12/37

7438人が本棚に入れています
本棚に追加
/315ページ
「これ、どうするつもりですか」 許可といわれても、なにに使うかによっては今すぐ消してもらいたい。 人懐こい顔立ちをしているけれど、どう見ても胡散臭いその風貌に、怪しい想像しかできない。 そんな私の気持ちを察したのか、男は胸ポケットから名刺を取り出して差し出した。 「そんな怖い顔しないで、美人が台無しだよ。こう見えて一応写真家なんだ。怪しいやつじゃない」 「だいたい怪しい人は、自分のことを怪しくないって言うんですよ」 そう言うと、男はそりゃそうだと笑う。 名刺には瀬川直人と書かれている。 だからといって怪しくないとは言い切れなかった。 .
/315ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7438人が本棚に入れています
本棚に追加