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「私、先生呼んでくる」
兄の横にいた女性が医者を呼びに部屋を出ていった。
「お兄ちゃん、どうしたの?」
状況がわからず兄に聞いてみると、どうしたのじゃないだろうと叱られた。
「昨日、駅前のスクランブル交差点の真ん中でいきなり倒れたんだ。なにがあったのか聞きたいのはこっちのほうだ」
そう言われてそのときの状況を思い浮かべてみるけれど、記憶が抜け落ちたように昨日のことをなにも覚えていなかった。
いくら考えても駅前に行った記憶さえなくて。
「わからない」
「今はいい、ゆっくり休んで。きっとそのうち思い出すさ」
そう宥められて頷き、もう一度目を閉じた。
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