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ふたりがあれだけ親身になってくれなければ、きっとまだ直人の思い出にしがみついたまま過ごしていた。
けれど会社を退職して引っ越してみると、のんびり貯金で生活とはいかなかった。
引っ越して何日も経たないうちに、珍しく琴乃さんから電話がかかってきた。
『彩ちゃん、ごめん。ちょっとお店に来てくれない?』
「今ですか?」
『そう、今すぐ。お願いね、待ってるから』
返事もしないうちに電話を切られた。
以前なら遠くてすぐには駆けつけられなかったけれど、今は徒歩圏内。
琴乃さんの慌てた様子が気になって急いで駆けつける。
カフェにつくと琴乃さんは忙しそうにフロアを行き来し、兄が厨房で調理中だった。
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