大切な人

6/37
7427人が本棚に入れています
本棚に追加
/315ページ
犯罪が起こったわけではなかったので、ニュースにはならなかったけれど、相当な騒ぎになったと教えられた。 気を失っていたからよかったものの、いや良くはないのだけれど。 きっと人だかりの真ん中で倒れていたと思うと、今更恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだった。 「ここに来てもなにも思い出せない」 「思い出させようと思って連れてきたわけじゃないし、ゆっくり思い出せばいいだろ」 帰り道に通りかかっただけなのはわかるけれど、出来れば早く思い出したかった。 そしてなぜか思い出さなくてはいけない気がした。 自宅につき、鍵を開けてドアを潜ると、いつも通りなにも変わらずすべてがそこにあった。 たったひとつを除いては……。 .
/315ページ

最初のコメントを投稿しよう!