第1章 菓絵と優太

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 お風呂から出て、リビングの壁に掛けられている時計を見たら、一時半を過ぎていた。  私はこの時間はいつも布団に入って眠っている。  すごく眠いけど、布団に入る前に眠たい目を擦って、今日一日の中で体験したことや感じたことなどをノートに書いてみた。    いっぱい歩いた。  いっぱい汗を掻いた。  お日様の光をいっぱい浴びた。  いろんな空の表情を見た。  いろんな形の雲を見た。  いろんな色の星を見た。  いろんな風を感じた。  空気が美味しかった。  優太さんといろんな話をした。  優太さんに写真を撮ってもらった。  優太さんと一緒に紙飛行機を飛ばした。  優太さんと生ビールで乾杯した。  優太さんの人柄が改めてわかった。  とても刺激的で楽しい一日だった。  とても幸せな気持ちになれた。  私は日記を書いたのもかなり久しぶり。なんだか楽しい。でも、浮かれてばかりはいられない。  祖父母のために、子供たちのために、お客さんのために、優太さんのために、自分のために、この瞬間から気持ちを切り替えて、これまで以上に頑張って働かなければならない。  駄菓子屋を切り盛りするようになってからの私は、毎朝七時半まで寝ていて、満員電車に揺られることもなく、土日も祭日も平日も関係なく、とてもゆったりとした朝を迎えている。  商売柄、それはそれで致し方ないことなんだと思うけど、朝寝坊をして、だらだらと過ごすようになってしまったら、祖父母に顔向けできない。  気持ちを引き締め直すため、今日から毎朝六時半に起きて、ジョギングを始めることにした。
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