第1章 菓絵と優太

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       ふんふん♪  夏休みが終わって二学期が始まると、私の駄菓子屋は一気に暇になってしまう。  お客さんが少ない午前中は特に暇。  私は時間を持て余してしまい、仕方なく家庭菜園の手入をする。一年中、夏休みだったらいいのにって思いながら。  九月九日土曜日、天気は爽やかな秋晴れ。  まだまだ夏の日差しが強いけど、心地よい風が吹いている。  今日は絶好のハイキング日和。  午前中だけ営業して、お昼過ぎに駄菓子屋のシャッターを閉めて、シャッターの中央に臨時休業のお知らせの貼り紙を貼り、お昼ご飯を食べた後、普段は滅多にしないメイクをしてみた。  今日はいつもより肌の調子が良いのか、メイクのノリが良い。  優太さんが来る時間まで、あと三十分くらい。  ドキドキしすぎて落ち着かない。  私は高鳴る鼓動を抑えながら、オレンジ色のリュックサックに駄菓子とお絵描きセットとハンカチとタオルとコーヒー牛乳の入った水筒を詰め込んで、服を着替えて履き慣れたスニーカーを履いて麦わら帽子を被り、スケッチブックを持って駄菓子屋の軒先に立った。
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