第1章 菓絵と優太

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「すごく飛びましたね」 「はい。もしかしたら、新記録かもしれません。紙飛行機を拾ってきますので、ちょっと待っててくださいね」  とっても機嫌が良さそうな優太さんは、軽やかな足取りで丘を下っていき、二機の紙飛行機を回収して、笑顔で走って戻ってきた。 「紙飛行機を飛ばすのも、とっても楽しいですね」 「はい。楽しんでもらえて良かったです。この二機の紙飛行機は、菓絵さんにプレゼントしますね。記念に持っていてください」  優太さんがにっこりと微笑みながら、ついさっき飛ばした二機の紙飛行機を私に手渡してくれた。 「どうもありがとうございます。家に帰ったら、部屋に飾りますね」  嬉しくなった私は、空の下の笑顔の樹の下に置いてあるスケッチブックを切り離して、さっき描き上げた絵を優太さんに手渡してみた。 「また僕の絵を描いてくれたんですね。すごく嬉しいです。家に帰ったら、部屋の壁に飾ろうと思います」  私が描いた絵を、いつも喜んで受け取ってくれる優しい人柄の優太さん。こんなに喜んでもらえると、また描いてみようという気持ちになれる。 「少し風が冷たくなってきましたが、この秘密の丘からは、星空も綺麗に見えますので、空の下の笑顔の樹の下に座って、星空を眺めてから帰りましょうか」 「はい。どんな星空が見られるのか楽しみです」  優太さんと私は再び空の下の笑顔の樹の下に座り、駄菓子の残りを食べているうちに、空がオレンジ色から群青色に変わってきて、いろんな色の星が輝き始めた。
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