9人が本棚に入れています
本棚に追加
優太さんと私の顔を優しく照らしてくれているまんまるのお月さん。
オレンジ色の星。黄色の星。赤色の星。白色の星。青色の星。青白い光を放っている星。
私の家の窓から見える星空とは比べものにならないほどの美しい星空。
私はこうして男性と二人きりで星空を見上げたのはいつ以来だろう。
思い出せないくらいだから、生まれて初めてなのかもしれない。
「とっても美しい星空ですね」
「満天の星空とまではいきませんが、秘密の丘の空気はとても澄んでいますので、平地よりも多くの星が見えるのだと思います」
月明かりの下で、優しく微笑んでいる優太さんの顔も、夜空に浮かんでいる星のように見える。
「もうすぐ八時になりますし、風がだいぶ冷たくなってきましたので、そろそろ家に帰りましょうか」
「はい。お腹も減ってきましたからね」
帰りが遅くならないように、私に気を遣ってくれたのだと思う。
優太さんは勢いよく立ち上がり、カメラの三脚をケースに入れて帰り支度を始めた。
私の心を癒してくれた秘密の丘から離れるのは、ちょっと名残惜しいけど、優太さんと一緒に帰るため、私も立ち上がって帰り支度を始めた。
「今日もありがとう。また来週も来るからね」
帰り支度を済ませた優太さんは、麦わら帽子を脱いで、空の下の笑顔の樹に向かって挨拶をしていた。
「どうもお世話になりました。私もまた来ますね」
私も麦わら帽子を脱いで、空の下の笑顔の樹に向かって挨拶をした。
返事は返ってこなかったけど、私の顔と名前も覚えてくれたと思う。
最初のコメントを投稿しよう!