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優太さんも私も麦わら帽子を被り直し、行きと同じ道を歩いて駅に向かい、電車を二本乗り継いで、地元の街に戻った。
駅の時計の時刻は九時三十八分。私はこんな時間まで外に居るのはかなり久しぶりのこと。
「優太さん、あのラーメン屋さんに寄って、食事をしていきませんか?」
「はい。僕もラーメンを食べたいと思っていたところです」
ぐーぐー、きゅるるるるー。と鳴り続けているお腹を満たすため、笑顔で返事をしてくれた優太さんと駅前の商店街にあるラーメン屋さんに入った。
「菓絵ちゃん、山下くん、いらっしゃい」
カウンター席に座った私と優太さんに声を掛けてきたラーメン屋さんのおじさんも、私の駄菓子屋の常連さんの一人で、大切な奥様を亡くされてから、ずっと一人でラーメン屋さんを切り盛りしている。
「こんばんは。まだ食事できますか?」
閉店時間は十時なので、ラーメン屋さんのおじさんに聞いてみた。
「できますよ。それにしても、珍しいツーショットですね。デートしてきたんですか?」
ラーメン屋さんのおじさんが、にこにこと微笑みながら聞いてきた。
私も優太さんも、麦わら帽子とリュックサックを持っているので、恋人同士に思われたのかもしれない。
「いえいえ、別にデートというわけではないと思います」
私は恥ずかしくなってしまい、お茶を濁すような答え方をしてしまった。
私は優太さんと付き合っているわけでもないし、優太さんの彼女というわけでもない。だから、デートではないと思う。
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