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ドキ ドキ ドキ ドキ……
「まぁ、今日のところは挨拶まわりってとこだから。」
「…は、はい。」
ドキ ドキ ドキ ドキ……
4月に入社してから1ヶ月。
研修も終えて、今日から営業の先輩と一緒に得意先を回ることとなった。
オレの入った会社『KANTO』は、東海地区に支店を7つ持つ老舗の企業。ネジや蝶番、アジャスターなど機械部品を取り扱う会社だ。
工場地帯のこの町には自動車メーカー中心に多くの中小企業がある。
地域一番を目指すこの会社にやりがいも感じるし、就職させてもらった以上1日でも早く仕事を物にしていきたいと思っている。
車の助手席に乗り、ルート地図と赤ペンを用意する。
車に揺られながら、
得意先までの目印や駐車場情報、担当者の名前、特徴などをメモする。
何軒か回っているうちに
「ハハッ。噂は本当だな。」
「え?」
「研修担当から、近年稀にみるマジメ男が入社してきた。って聞いてな。」
「は、はぁ………オレですか?」
鼻で笑いながら、先輩は頷いた。
長めの髪をかきあげる仕草をよくする。
派手な顔つきをしているが営業職な為、髪も黒くパッと見、遊び人って感じではない。
ないけども…
クククッと笑い続ける先輩に、どこかチャラついた印象を受けるのは……オレだけかな?
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