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他の漢方の商品は、祭りで売るようなものではなかった。しかし、相談者が多く来ているので、売り切れの札を出しながら、佳親と季子は中で相談を受けていた。
「次、湯沢」
前掛けは外したが、作務衣のまま移動する。
隣であるが、湯沢の家の店には入った事が無かった。
「……漬物店だったのか」
自家製の漬物を売っていた。湯沢家は、他に店舗も持っているので、ここで営業しているのは土日祝日と、正月などの期間のみであった。
今度も揃いの前掛けで、漬物を売る。
そうやって参道の店を巡り、秋里の喫茶店に到着する頃には、全員疲れてしまっていた。
「水ください」
夜になっていたので、中学生は家に戻す。俺は整理券で座布団ジャンボを購入し、背中に背負っていた。まだ温かく、それに、巨大であった。
「俺の家はシフォンケーキだったけれど、もう売り切れだから休んでいいよ」
秋里は残っているメンバーに、麦茶を持ってきてくれた。
「すごかったね。皆、写真を撮りまくっていたもの。久芳君も印貢君も、美形なうえにパフォーマンスしてくれるし。他のメンバーも美しいしね」
人寄せに、サッカー技やばく転などもしてしまった。
秋里の母は、秋里の姉と盛り上がっていた。まあ、途中で来た名護に接客させたが、女性受けが非常に良かった。
「それに和服でしょ。もう祭りよりも、こっちが重要!」
そこに、どうしてここに居る事が分かったのか、藤原がやってきた。藤原は来るなりため息をついていた。
「藤原、どうしたの?」
藤原は四区の住人であるが、ここのメンバーとは旧知の仲であった。
秋里が藤原にも麦茶を出していた。
「佳親さんもいないだろう。神輿、海の幸、山の幸でぶつかって、勝ったほうが豊作でしょ。勝敗どころではなくて、始まらない」
恒例では、引き分けで終わる。神輿は山側三基、海側二基がある。引き分けになるように、上手く回数を調整して終わるのだ。
「山側、誰も神輿に乗れない。乗って揺れたら落ちる。歩くと落ちる。山側の大敗」
藤原のいる海側は、神輿に乗ったまま、山側の到着を待ち続ける。そこに、俺達のパフォーマンス?が入ってしまい、観客が去ってゆく。山側は怒りだし、パフォーマンスを中止させろと怒鳴り出す。
山側の組頭は、自分の息子を急遽乗せて見たりもしていた。
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