『宇賀神』

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 ならば、通行に邪魔だったので片付けただけであったのか。  片付けた場所を聞き行ってみると、そこには何も無かった。 「無い」  相澤が問い合わせてみると、そもそも寺側も祭りの主催者も、片付けなど頼んでいなかった。 「……騙された?」  征響は、ラグビー部の先輩に急いで連絡を取り、今の現状を説明した。神輿を片付けた場所を全て聞き出したが、そこには、既に何も無かった。  祭りの最中に、神輿が盗まれると言う事もあるのか。もしかして、祭りの最中にわざわざ盗んだのか。  神輿は三基盗まれ、警察が調べていた。しかし、久芳漢方薬局の神輿は無事であった。でも、本物のミイラと分かり、車の通行が可能になったら、詳しい調査のため警察に持ってゆかれる事になる。  神輿の盗まれた祭りは、話題にはなるようで、テレビのレポーターが既に来ていた。俺は、参道から外れると、小さな公園のベンチに腰をかけた。  俺が参加したからなのか、それとも偶然なのかトラブルが相次いで発生する。俺は、項垂れて地面を見ていた。そこに誰かが歩いてきた。  俺が顔を上げずにいると、足が俺の視線の先で立ち止まった。見上げると、ニコルが前に立っていた。 「ヒロムを排除した神輿、無くなってもいいだろ?」  これはニコルの仕業ではないが、ニコルも裏の世界に住んでいる。  あれこれ漢字の発音になったのに、どうして俺は弘武ではなくヒロムなのであろうか。 「神輿は、どこに行ったの?」 「あれは、売り物であったよ。阿部はあのヘビカミサマ?をオークションに出し、入れ物を神輿として売っていた。買い手は付いていたのだけど、実際に神輿であったというコト、重要」  十年、神輿であった事で、価値が上がった。十年目の今年、阿部は死んでも予定通り納品される。 「ノコリの神輿も、回収しに来るよ」  闇のオークションサイトの高額取引は、金を払って品物が納品されなかった場合は、数人の関係者が消える。文字通り、世の中から消されてしまう。  ニコルは俺の頭を撫ぜていた。 「オレのカワイイ、ヒロム」  ニコルは俺の事になると、片言化が進む。 「ミナにタイセツにされているから、俺もウレシイけど、少し、サビシイ」  かなり外国人になってしまった。 「ニコルは日本へ、愛しい人のために来たのだろ?俺に構わなくてもいいよ。俺はニコルが幸せなら嬉しい」
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