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そんな些細な出来事なんて、僕の頭の中からはすぐにかき消されて、知り合いとか友達と呼べる人を作りたいという思いを抱いたり、短いスカートをから伸びるスラリとした脚を眺めたり、胸元が大きく開かれた服を着ている女性の胸の中身が見えないかと夢想することに多くの時間を使っていた。
僕が電車の中の彼女を次に発見したのは、数日後のことだ。
分厚いシラバスと呼ばれる大学の講義内用の案内を片手にどの講義を受ければいいのか悩みながら帰りの電車に乗っていたら、発車待ちの特急に乗ってきたのだ。
あの、ちょっと天然の彼女が。
ちょっと天然の彼女は、むっちりとした脚を隠すようにモッタリでヒラヒラな服を複雑に重ね着していて、きっとおしゃれなんだろうと思われた。
もしも、僕が彼女のような重ね着に挑戦したら、きっとホームレスになってしまう。
僕は、なんとなく、数日前の天然っぽい言動を思い出して心が温かくなっていた。
彼女とその友人は、二人並んで座れる座席がなかったらしく入り口付近で楽しそうにおしゃべりをしていた。
僕は見るとはなしにその二人組を見たり、シラバスの内容を読んだりしながら東岡崎駅までの時間を過ごした。
もうすぐ東岡崎だというアナウンスで僕は立ち上がり、彼女とその友人は僕が立ったのを目ざとく見つけて僕が座っていた座席に座ろうと動いた。
僕は、なんだかドキドキしながら彼女たちと狭い通路ですれ違ったのだ。
電車が東岡崎駅に到着して、今、まさにドアが開くというときに声をかけられた。
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