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「すっかり暗くなってしまいましたね」
花音は、呟きながら薄暗くなった校舎を見回る。
体育祭間近の為、先程まで生徒が騒がしくしていたので、隠れて残っていないかのチェックを数人の教師で行っている。
花音が任されたのは、特別棟。
被服室や美術室もあるこの棟では、衣装班やパネル班がせっせと仕上げに向けて作業をしていた。
「さて、残っている人はいますか?…早く帰りなさーい」
教室を一つ一つ隅々までチェックしていく。
ふと、人影を見た気がした。
見上げれば、階段の踊場。
気づけば、あの噂の2階と3階の間。
「…舞子さん…さん?」
視線の先には、うっすら透けた女子生徒が踊っていた。
「ねぇ、その、“マイコさん”ってなぁに?みんなあたしをそう呼ぶんだけど…着物とか、かつらとか、白塗りじゃないんとけど?」
不服そうに踊るのをやめて、腕を組んでいる。
「……あぁ、舞妓さんですか?確かに」
花音は思わず吹き出してしまった。
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