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誰にでも大なり小なり秘密がある。
特に当時のわたし達の周りの大人たちは、沢山の秘密を抱えていた様に思う。
うちの学校の先生達は、わたし達に何かを隠している。
ある日、職員室で教頭先生達とほかの先生達が例の噂話をしているのを聴いた。
「・・・とにかく、“口裂け女”だかの噂は生徒たちにはさせない様に厳しく注意してもらいたい。」
教頭先生が眉をひそめて言った。この先生はいつもこんな顔をしている。
「“目潰し女”です、教頭先生。」
訂正したのは、学年主任の隣りのクラスの担任の先生だ。
「そうでした。“口裂け女”は私の時代のデマでした。」
“なによ、自分だって子どもの頃に夢中になってたクセに!”
わたしは直ぐに自分のことは棚に上げる大人は、苦手だった。
「警察はなんと言ってるんですか?」
さらに学年主任が続けて尋ねる。
「中條先生の遺体は、検視が済まないと戻って来ません。正式に発表してから、お通夜と葬儀という流れになるでしょう。それまでは絶対に内密にして誰にも伏せておいて・・・」
そこまで聴いたところで立ち眩みがしたわたしは、隠れていた職員机に積んであった教科書を落としてしまった。
その時のわたしの受けた衝撃は、あまりにも残酷なものだった。
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