都市伝説の正体

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わたしが念のため措置入院させられていた頃、一方友だちの菜摘は、わたしの起こした騒動を、彼女の母親と近所のお母さん友だち達とで話しているのを盗み聴いたとかで、沢山の友だちにショッキングな話題を提供していた。違うクラスの彼女にとっては、わたしの受けたと程のの衝撃はなかったとみえて、かなりのハイペースで仕事をこなしたらしい。 「あのね、中條先生のお腹にいた赤ちゃんの父親が誰なのかは未だに判らないらしいの。みんなに内緒にしていた先生は、ご両親を頼って独りで育てていく覚悟だったんだって。これはここだけの話、絶対に誰にも言っちゃダメだからね。」 如何にも大人びた物言いで、こっそり皆に触れ回る菜摘の内緒話は、禁断の秘めごととしてインパクトを与え、聴かされた子どもにとっては誰かに話さずにはいられない、絶対に抗えない魔力を持っていた。 彼女のばら撒いた秘密は、他の誰よりも強力な拡散能力を秘めて、子ども達の間を駆け抜けていった。 興味深いことにそうした特別な噂話に限っては、伝聞されていく過程において時にさらなる新しい情報をまとって、より強大な都市伝説へと変貌を遂げていくのである。
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