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わたしの一番古くからの幼馴染のひとり茉都香。
「なんだか私、どうかしてた。もうしないから…ゴメンね栞。」
栞は、わたしの名だ。
しばらくして落ち着きを取り戻した茉都香は、わたしの眼を見る事なく謝った。心配だから家まで送っていくというわたしからの提案をキッパリ拒絶すると、肩に置いた手を振り払って、此方を振り返る事無く彼女は走り去った。
この1年半の内に茉都香とわたしの間に広がった大きく深い溝は、想像以上にふたりを遠ざけていた。次第に小さくなっていく彼女の後ろ姿を見送りながら、とうとうわたしは茉都香を追い掛けていく事が出来なかった。
その夜の彼女の小さな後ろ姿が、茉都香を見た最期となった。
後悔が無いと言えば嘘になる。この夜の出来事は、誰にも言えぬまま、今に至っている。
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