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うんって頷いて、オムライスをスプーンにこぼれんばかりにもりあげて、こぼすことなく口に押しこんだ。一口ごとに確実に減っていくオムライスに頬が緩む。もりもりってこういう感じかな。半分残ったエビフライを尻尾ごとぱりぱりと音を立てて齧っている。
よほど美味しかったのか、薄い唇からん~ってため息が漏れた。
視線がひょいとあがって、緩んだ俺の顔からステーキサンドに落ちる。
「見てないで、食えよ」
むすっと不機嫌な顔をして、手元が残り少ないオムライスを綺麗にかきよせる。
「これも前に食べたけど、ステーキサンドもうまいよ。ひとつどうぞ?」
あんないい顔を見せてくれるなら、全部食べてくれていいんだけど。全部とか言ったらきっと食べてくれないような気がしてそう言った。
「なんで?食えよ」
「昨日の飲み過ぎであんま食欲ないんだよな。その様子ならまだ入るだろ?」
「今日も呑んでたよね。なんでいい大人がそんな飲むかな」
「朔の作ったカクテルうまかったし」
「ナタさんのに比べたら、まだまだ」
「ん~。俺はおいしく感じたけどなあ。好みって感じで……」
「褒めたって何も出ないぞ」
最後の一口を口に押しこむと、かちゃりとスプーンを皿に置く。
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