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野生の動物が死んだように眠る。 その準備をするための季節。 これは、とある病院の小さな病室での話。 そこの患者もまた、同じように眠ろうとしている。ただし、それは二度と起きることのない眠りだ。 ボサボサの黒髪の少年が、ベットに横たわる友人を見下ろしている。 「・・・・」 ピッピッピッ 友人の生存を知らせる心拍機の音だけが病室に響く。 「・・・・」 友人は、少年を助けるために大きな事故に巻き込まれてしまった。 「なんで、俺なんかを助けたんだよ」 少年と友人。この二人はまるで真逆。人に嫌われる者と好かれる者。 「なんとか、言えよ」 逆であるが故か、二人は言葉を交わさずとも考えてることが、何となく理解できていた。 「皆はお前のことを、待ってるんだぞ」 だからこそ、今回のことは理解ができなかった。 「俺みたいな奴なんか、世の中には必要ないって事ぐらい分かってただろ」 勉強も運動も人付き合いも、何一つ出来ない少年 「早く、目を開けろよ」 ・・・・少年の願いが叶ったのか、友人の目が薄く開いた 「おい!」 「うるさい」 「なっ!こっちは心配してやってたんだぞ!」 「余計なお世話だよ。僕に話し掛けてる暇が有るなら勉強でもしてな」 「っ!」 あれほど待ち望んでいた友人の目覚め、再会は少年の想い描いていたものとは大きくかけ離れていた。 「ねぇ」 「・・・何だよ」 「早く行かないの?」 「・・・行かない」 「ここにいても、時間の無駄だよ。どうせ、僕は助からないんだろ?」 「・・・」 友人の問い掛けに少年は答えられなかった。 何故? それは友人が助からないから 「やっぱりそうなんだ。相変わらず隠し事が出来ないね」 自分の考えが当たったと笑う友人。 「何が可笑しいんだよ!死ぬんだぞ!」 「死ぬから笑ってるのさ」 あまりの早い返答に少年は息を飲んだ。 「死んだら笑えないだろ?だから、今のうちに笑ってるんだよ」 友人の言うことは、当たり前のことだ。死ねば何も出来ない。笑うことも。怒ることも。泣くことも。何も出来ない。
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