虫を飼う

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 馬車を降りて、賑わう市場の中を歩く。  面白いものはないか。  さほど期待もせず、生き生きと動く人の波を、死んだ瞳ですり抜けていった。 「お兄さん、こちらへいらっしゃい」  ボロ布を身に纏った爺に袖を掴まれ、足を止めた。  人売と思しきその男は、横に座らせた少女を指差しこう言った。 「この娘を買っておいきなさいよ。面白いものが見れますぞ」
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