安田課長の憂鬱

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「そんな風に、頭下げられてもね。処分を下すのは結局のところ、上の仕事なんだしさ。みっともないからふたりとも、頭を上げてくれないか」  自分のことを『俺様』と言ってる江藤が頭を下げる姿は、明らかに他の社員の目を惹くだろう。こんな茶番に巻き込まれるのは、ご免被りたい。 「さっさと業務に戻れ。お前たちの尻拭いは私の仕事だ。今後、こういうことがないようにして欲しいね」  呆れ返った言葉にもう一度謝罪し、丁寧に頭を下げてから去って行く。そんなふたりの会話に、ちゃっかりと耳をそばだててみた。 「んもぅ江藤さんってば、首なんて絞められていなかったのに。相手を殺しかけていたのは、どこの誰ですか……」 「ぁあ゛!? 先に手を出してきたのは、あっちなんだぞ。俺様が制裁しなくて、誰がするんだ? こっちは休日叩いて、仕事に全力を注いでるっていうのに。部長だからって会社の金を好き勝手にして、いいワケがなかろう。故にアレは、社員皆からの恨み辛みを、思う存分に混ぜてやってだなぁ」 「だからってあんな風に、俺まで巻き添えにすることないじゃないですか。店の物を滅茶苦茶にするとか、マジでありえねぇ……」 「宮本、お前の普段の行いを思い返してみろ。俺様が見えないところで、どれだけ苦労しているのか――なので、その恨みを晴らしたまでだ」  ――おいおい、どっちが先輩か分かったものじゃないな――
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