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----年4月
その日は、風が少し強くグランド近くに植えられた桜の木の蕾が揺れていたのを覚えている。
俺はいつものように「Earth」のソファーに座りながらお気に入りのナイフで鉛筆を削っていた。
「シャリ…………シャリ…………」と心地よい音が室内に響き渡る。
俺は、鉛筆削り機を使わない。
ナイフから伝わる木材を削る振動と音が好きだからだ。
その横で、むすっとした顔でこちらを睨む同年代の女の子が座っている。
髪は黒髪ロング、顔立ちは「美人」と「可愛い」の中間ぐらいな印象で…………
「ねぇ…………ユウ…あの娘なに?」
と彼女が耳元で囁き、壁に飾られた画を見る「invader」の方に目を向けた。
その髪は金髪でショートカット、顔立ちは凛々しく、何もかも見抜いてしまいそうで真っ直ぐとした鋭い目が印象的だ。
「ああ………前に話しただろう?ちょっと前に顔を出すことになったって」
「それは聞いたわ、でもあの娘この学校の生徒じゃないでしょう?」
「今さら言ったって仕方ないだろ?それにだ!お前もリーダーが良いって言ってるんだから諦めんしゃい!あっ!それともあれ?リーダーが取られるのが嫌なのか?」
と彼女をからかった瞬間に彼女が顔を赤らめ、間髪を入れずに大きな声で言い放った。
「ッッ!私が言いたいのはそうじゃなくて!………」
それに対して、俺とinvaderが同時に驚き彼女に目を向けた。
そしてinvaderが
「ビックリしたな!もう!……………であんた誰?雄一の何なの?」
と言い放つ。
これに対して彼女がカチンと来たようで普段は冷静なのだが、珍しく声を荒らげて言う。
「あんた誰はこっちの台詞だわっ!そもそも、あなたこそリーダーのなに?で、何故ここにいるのよ!」
「話す必要ある?」
あーだこーだと口論している彼女とinvaderの仲裁に入る。
「まぁ落ち着けって、そうだ!珈琲でも飲もうか?今淹れるから仲良くな」
と言ってソファーから立ち上がり、珈琲とアルコールランプとビーカーを用意する。
それを聞いて、俺の気遣いを感じたのか、彼女は口を閉じた。
そして、むすりとした顔で、ちょっと何かあの娘に言いなさいよといった顔をして見てくる。
はぁ…………
「雄一じゃないだろう?きちんと、さんをつけなさい、さんを」
と俺は、invaderに指摘した。
彼女は、そうじゃないだろうという顔をしていたが、無視して珈琲の準備に取り掛かった。
やれやれ
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