甲斐甲斐しい幼馴染と私、その一幕。

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「人間じゃなくなりたいの?」  そんな真面目に聞き返さないでほしい。馬鹿げた妄想だというのはわかっていて夢想していたわけなので、ガチでそんなことを考えてると思われるのはちょっと。  ――という弁解をする前に、幼馴染が口にした内容に、私の思考は止まった。 「……人間より丈夫な人外になるにしても、今は昔と違って個々が好きに仲間を増やせないから事前の審査とか結構な手間だし、人外になると逆に普通の仕事できなくなるから今の仕事をバリバリっていうのも無理だし、あと俺は好きでやってるから迷惑とかじゃないし」 「……。…………?」 「そもそも人間より丈夫っていう基準が……身体的には丈夫になるけど、人間にはない弱点とかもあるし……君がどうしてもって言うなら俺のとこでも他の種族でも伝手使ってどうにかするけど」 「…………う、うん?」 「でもそれよりオススメなのが――」  にっこりと、幼馴染が笑う。  ……幼馴染として過ごして20年、多分一度も見たことない笑みで。 「俺に永久就職って、どう?」  俺、お買い得物件だと思うよ、という台詞は、残念ながらキャパシティオーバーした私の耳を素通りしていった。
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