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咄嗟に隠したけど、私は見逃さなかった。
神崎さんの左の薬指に光るものを。
「おめでとうございます!え?いつ結婚したんですか?」
「つい最近、とりあえず入籍だけね」
嬉しさと興奮で勢いよく立ち上がる咲穂に神崎が気恥ずかしそうな笑いを漏らす。
「びっくりだよな。つい最近まで結婚を渋ってたくせに、急に連絡が来たかと思ったらコレ」
テーブルに頬杖をつき呆れ気味に神崎を見る。
「悪かったって。でもユキのおかげで決心ついたし、感謝してる」
神崎が軽く手を合わせ謝ってきた。
「そのうち、ちゃんと紹介しろよ」
「分かってるって」
そして注文を取ると神崎はカウンターへと戻って行った。
「神崎さんが結婚か―。嬉しいけど、ちょっと寂しいかも」
「なんでだよ」
おかしなことを言い出す咲穂にすかさず言い返すと、とぼけた顔をして誤魔化されてしまった。
まあ、深い意味はないことは分かっているから良いけど……
でも、やっぱり神崎の店になんか連れてくるんじゃなかったと思ってしまった。
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