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――…
―…
それから数か月後の昼下がり。
俺はお釣りをもらうことも忘れタクシーから降りると脇目も振らず一気に走り出していた。
エレベーターを待つことさえじれったくて、階段を駆け上がる。
「あの各務ですけど。えっと、妻が産気づいたって連絡もらって……」
息を切らしながらナースステーションに着くと、前のめりになって訊ねる。
「ちょっと待ってください。各務さんですね。奥さんの下の名前は?」
「咲穂です」
看護師さんの質問に間を入れず答える。
「ああ、各務咲穂さんですね。各務さんなら……」
「由貴くん、こっちよ」
急に名前を呼ばれ振り返ると、そこにはお義母さんがペットボトルを手に立っていた。
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