第一節

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 銃声が間を置かず木霊する。音の方へと走り森の端まで来ると、戦闘の様子を見ることができた。市街地に至るまでには農村地区があり、森から農村地区までは平野が広がっているのだが、モンスター達は平野を身を隠す知恵を働かせることもなく、無闇矢鱈に突進していく。兵士達は塹壕を組み上げ、其処から覗かせた鉄砲でモンスター達に銃弾を食らわせている。  銃声と白煙が平野に響き、モンスター達は次々と絶叫を上げて倒れていく。それでもモンスターの突進は止まないが、兵士達も次々と増員し、鉛玉の数を増やしていく。この分なら、農村地区にモンスターが侵入することはないだろう。  兵士達に見つからないよう身を屈め、森を西へ行く。支配領域を展開するも農村地区までは届かないので、適宜目視で向こうの様子を窺う。兵士達が慌てて塹壕戦が行われている南東地区に向かっているのが見える。もう少し西へ行けば、侵入できる隙間ができているかもしれない。  南地区に差しかかった辺りで、兵士の姿が見えなくなった。ここからは速さが勝負だ。遮蔽物の無い中を瞬息で駆け抜けていかなければならない。一つ、二つ、三つと呼吸を整える。よし。行こう。  両脚に身体強化を施し、一気に駆ける。支配領域は殺気を感知しない。後五十歩で農村地区だ。緊張で呼吸が止まる。このまま見つかるなよ。  もう十歩。  銃声。東の方だ。  見つかったか?  いや、銃声にしては音が高く、尾を引いている。  農村地区。  手近な人家の塀を乗り越え身を隠し、音のした方を見る。  緑の光が空を明るくしている。照明弾だったようだ。どうやらモンスターを駆逐したらしい。となると、兵士達がここに戻ってくる。農村地区に入ったとはいえ家屋と家屋との距離は大分空いてるし、農地には身を隠す場所はあまりない。長居はできないな。
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