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生い茂る草木を掻き分け、地下道へ入る。支配領域を限界まで拡大するが、感知するのは小動物や虫の気配だけ。暫くは安全に進めそうだ。
明りといえば松明を数本と、それに火を着ける火打石だけだが、精々四五歩先を照らすばかりで、それより先は全くの闇、質量すら感じるような濃い闇が俺を圧迫する。しかし空間は確かに開いていて、俺の足音が幾重にも反響して戻ってくる。まるで進む一歩一歩の是非を問うかのように。
そうだ。王国に行ったところで、俺にできることなんて高が知れている。却って闇雲に市井を混乱させるかもしれない。けれど、そんな迷いでこの欲動を抑え込みたくない。停滞を受け入れられないのであれば、進まなければ。
何度か道に迷いながらも、漸く見慣れた広場に出られた。俺とフォールが戦い、そしてフォールが俺に託したあの広場だ。辺りを照らしながら注意深く進んでいくと、其処此処に生々しい戦闘の痕が見られた。特に、通路近くの地面は広範囲にわたって黒く変色していて、此処で誰かが死んだことを黙して語っていた。
広場の壁際に立ち、右手に強化を施して壁の岩盤を砕いた。砕け散った中で一番大きな岩を見繕うと、それを数度叩き、直方体に成型する。それを血痕の上に置いた。歪で、名も祈りも刻まれいない。これから先、もし誰かがここを訪れても、これが何かを知ることはないだろう。誰も訪れず、誰の認識下にも置かれないかもしれない。それでも、フォールの墓はここにある。世界だけは、フォールがここにいたことを知っている。だから、安らかに眠れ。
同じような墓を二つ、この場にいた兄弟達のために建てた。その他の兄弟達の墓は、碑碣としてフォールの墓の横に建てた。本当は全員分の墓を作りたかったが、地下道全てを見て回ることもできない。いつか、全てが収まった時、改めてここに来よう。
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