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「…ヴゥ…ァグ…ッ」
リュード達が部屋から出ていき、しばらくの静寂の中で女の呻きが聞こえだす。そして、僅かに動く右手を動かせて床に掌を就いて変形してしまった体をズルズル…と引きずらせて移動する。ディアはまた生きていた。体は間接などがメチャクチャになってボコボコにと盛り上がっている。頭は首の骨に支えられているが顔はまるでお化けに使われるような表情に変わっていた。顎の骨は砕けて、鼻は平らで骨が陥没して目は片方は垂れていた。
元の美しい姿からは掛け離れてしまった。
「リュ…ドっ…サマァァ…グチャッ…グチャッ…」
姿の消えたリュードの名を呼び、間接が外れてダランとなった両腕を無理矢理に動かせて、出血している手を這わせて前に進む。
しかし、女の体に異変が起こり始めた。
「アア…ヴグゥ…ぐあっ」呻く女の体の中で砕けた筈の骨が次々に再生を始めている。
顔の表情はすでに元に戻っている。
一体何が起こっているのだろうか?
女の身体は元の美しい姿へと戻っていく。
「うふふ…噂には聞いてたけど、それ以上の効果だわ…」
身体を再生した女は、破けたドレスを纏ったままで身体を起こした。部屋の中にある鏡の前に行き、自分の姿を映してみる。
「少し量が足りなかったみたいね…」
しかし、完全に再生してなかった。
鏡に映された女の顔の片面は肉が垂れて、目玉が飛び出ていた。リュードに捕まれた首はくっきりと赤黒アザが残っていた。
だが、魔界の殆どの地域では魔力を持つイリスの事は知られており、その血肉を求めようとする者が人間界に行くのだ。
「今度は肉片でも食べたら…不老不死になるかしら?」
デリアもその一人だった。魔王の寵愛を受けていたが、最近では相手にされなくなり人間界の神父の話を聞いて、イリスを魔界へ連れてきた。
「そしたら、私を愛して下さるかしら…うふふふ…」
鏡に映った自分のおぞましいとも言える姿を見て、笑みを浮かべていた。顔の反面を髪で隠すようにくしで解いた。
薄暗い蝋燭の明かりの中で笑い声を響かせていた。
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