魔王の城

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魔王の城

薄暗い雲が浮かび、今にも雨が降りそうな鼠色の空に届きそうな岩山の上に大きな城が在る。魔王・リュードの屋敷だ。 白い煉瓦で作られたお伽話の姫が住むような外壁の城だ。ライオンやドラゴンなどの石像が柱に乗せられた頑丈な外塀の中に広い庭と立派な屋敷があり、屋敷の表には大きな鉄門がある。 その重い門が開かれ、イリスを抱えたリュードと荷物を持つシャルが屋敷の中に足を踏み入れる。 「リュード様、お帰りなさいませっ」 すると、十数人の男女が並び言葉を揃えてを主人の帰りに礼をする。 その中のにはシェフの格好や清掃係の女、黒スーツの男達など…様々な役目を持つ使い魔達がいた。 「疲れた…薬湯の風呂の準備をしてくれ」 世話係の女達に風呂の準備を言い渡して、イリスの様子を見て顔をあげる。 「承知しました」 数人の男女がその場から立ち去る。女は入浴の準備、男は湯を入れる仕事に分かれている。 「それと、ルーフはいるか?…」 並ぶ使い魔達に視線を向けて、その場に居ない者の名を叫ぶ。 「リュード様、お帰りなさいませ…何かお呼びでしょうか?」  列の奥から茶色の衣に身を包み、首から紐を着けた眼鏡を下げて、尖った耳を持つ若い男が走り寄る。 「あとでコイツを見てくれっ…」 リュードは、ルーフにイリスを見せる。屋敷に着くまでは大人しく眠っていたが、次第に冷や汗を掻いて息を荒くしていた。 「これは…人間ですね?淫花の香の薫り?」  抱かれているイリスを見てルーフはすぐに人間と分かり、微かに衣服から薫る淫花の匂いを当てる。 「やはり…お前は鋭いな…」 ルーフの言葉に笑みを浮かべてリュードは、優秀な使い魔に答える。 「人間!?…我らにお土産ですか?」 イリスが人間と分かり、他の使い魔は涎を溢れさせる。魔物から見れば人間は餌に過ぎない、それに淫花により興奮してアドレナリンが分泌されて美味さが増してご馳走とも言える。 「悪いがコイツは私のペットだ…シャル、行くぞっ」 それをリュードは知っていたが、もちろん渡すつもりなどない。自分の所有物と答えると荷物持ちのシャルを引きつれて浴場へむかった。 浴場は一階の奥にあり、浴槽は各種類に分けられていて各部屋には長方形の形10人以上が入れる広さに湯が注がれている。
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