三人目…

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 その作品に登場する天才ゴールキーパーの事だ。 「いやいや、あのね!サッカーのプレー経験があるかって話なんだけどさぁ…」 「え…?そんなのないよ」  困惑するゆかりを後目に、萌はキョトンとしている。  どうやら萌は、サッカー漫画を読んだ事があるだけの漫画大好き少女のようだ。  彼女自身が口にしたように、サッカーは未経験で全くの素人と言う事になる。 「はへぇ…」  ゆかりの口から大きな溜め息が漏れる。  せっかく現れた入部希望者は、サッカー未経験の漫画大好き少女であった。 「どうしたの?ゆか…」 「あぁ、朋…実は、入部希望者なんだけどね──」  萌がサッカーの素人である事をゆかりは伝えるが、朋美は到って冷静である。 「当然でしょ?うちは新設校なんだから、サッカー経験者なんて、そうそういる訳ないじゃない」  まるで、想定内だと言わんばかりの口ぶりだ。  考えてみれば当然である。経験者でサッカーを続けるつもりがあるならば、それ相応の強豪校か、クラブチームに入るのが当たり前であろう。  わざわざ、サッカー部のない新設校に進学するはずなどない。 「萌木さんだったかしら?ようこそ、女子サッカー部へ!」
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