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彼女の魂を植えつけるための器だ。
リーンの魂を、魔物の体に移しかえたわけだ。
それが、エンデュミオン。
自分がリーンだったことを、エンデュミオンは忘れてしまっていた。
でも、それは、ザディアスにとって好都合だった。彼女を対等な恋人としてではなく、絶対的な支配下におくためには。
父であるザディアスには絶対服従するよう、仕立てあげた。ザディアスを愛し、求めるように。
「かわいい、私のお人形。おぼえているな? エンデュミオン。おまえが闇の国で、初めて私のものになったとき、記念につけてやった鈴のピアス」
「思いだした。全部、思いだしたよ。父上。ゆるして。あなたから逃げだした私を罰して」
キャロラインの薄紫色の瞳が、涙で、うるむ。瞳の色だけは、エンデュミオンと同じ。
「でも、私に飽きたから、いらないって言ったのは、父上じゃないか」
「そなたが、あまりに愛されていることに自信満々だったので。こらしめたのだ」
「ひどいや。私は、ほんとに、なげいたんだから。あなたに、すてられたと思って」
「だが、新しい趣向は楽しかったろう? そなたは何千回と輪廻をくりかえすあいだ、つねに涙にあえいだ。愛らしかったぞ」
「ほんと? 父上?」
甘ったれた顔で、見つめてくる。
サリーは、そばかすのエンデュミオンに、くちづけた。
「愛しているよ。エンデュミオン」
「そんなの、父上らしくない」
「この体は、私の本体の一滴の血から作られた、まがいもの。パーソナリティが本体ほど、デモーニッシュではない。やはり、今の私は、サリー・ジャリマと言うほうが、ふさわしい」
「それを言うなら、私だって。魔物の私の体は消滅しちゃったけど、どうしよう?」
「もう一度、作りなおせばいい。ヘレネー王女にしたことを、君にする」
「もう一度、教育してくれるんだね。うれしい」
「だが、ひとつだけ問題が残る」
とても重要な問題だ。
それは、今のサリーたちの生死にかかわる。
「エンデュミオンの記憶を思いだしたなら、君の幼少期の記憶も、もどったんじゃないか? 君が逃げだしてきたのは、例のアレだろ? どっかの政府が秘密裏におこなってる。ESP研究所」
キャロラインは、うなずく。
「ミタライワクチンなのよ」
「前も、そんなこと言ってたね。やはり、あれが重要なのか」
サリーは前世の真也の記憶を思いだしてみた。
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