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そうすれば、身体的には正常で、より能力の強いエスパーができあがる。
こうして、できあがったエスパーの遺伝情報を、人工子宮生まれの市民の遺伝子に組みこむ。今の四億人のエスパーは、こうやって造られた」
「なるほどね。エスパーにスクラッチが必要だったのは、そのためか。ヘルに感染させないためではなく、変異残余をかさねていくため」
「そして、ついに実験は完成しようとしている。あなたやユーベルみたいな、トリプルAのエンパシストが誕生した。あなたなら、オリジナルからクローン再生体へ、記憶を複写することもできるでしょ?」
サリーは舌打ちをついた。
どうやら、自分は、まんまと罠にかかったらしい。
そのつもりもなく、敵の本拠地に、とびこんでしまった。
サリーは常日頃、身辺に怪しい監視がついてることを知っていた。姿は見えなくても、エンパシーで感じていた。まとわりついてくる視線を、どこにいても感じていた。
ことに、このネオUSAに入ってからは。
「まずいな。いつ拉致監禁されても不思議じゃない。彼らは秘密工作員を私の身辺に置いている」
「ユーベルをディアナに送ったから、警戒させてしまったかもしれないわね」
「そうなると、ユーベルも危険か」
「あの子はエンデュミオンのメッセージを送り続けたことで、力を使いはたしたことにしておけばいいわ。Bランクくらいの能力しか使えなくなってしまったって」
「それはいいね。ディアナの市長に、そのように発表してもらおう」
残るはサリーとキャロラインだ。
サリーには、ずっと監視がついている。
キャロラインもグリーンヒルズ夫妻の実子ではないことがバレると、ふたたび追われる身となるだろう。
「すぐに月を出よう。いますぐ出発の準備をして」
二人は急いで、トランクに衣服をつめこんだ。
さて、出発しようと、スイートルームのドアをあけるーー
「おや、これから、おでかけですか? トランクなんて持って、まさかチェックアウトなさるんじゃないでしょうね? ひとこともアイサツなしとは、つれないですね」
ワイルダー事務次官の顔を見て、サリーは、ため息をついた。
「うかつだったよ。君は政府関係者だからな。私のまわりを、かぎまわってたのは、君か」
ジムの手には最新式のショックガンが、にぎられていた。最大出力にすれば、ゾウでも即死するやつだ。
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