五章 ディーモンズ・ラブ

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「今ごろ気づくとは、トリプルAも、たいしたことありませんな」 「セラピストはノゾキ魔じゃないんだ。必要なとき以外、エンパシーは使わない」 「紳士的なことで、こっちは助かりました。いつバレるかと内心、ひやひやしておりましてね。さあ、では、行きましょうか。あなたがたを特別VIPルームへ案内しましょう」 「VIPルーム? 人体実験室のまちがいだろ? えんりょしたいね」 「大統領閣下のお招きですよ。ぜひとも、おいでください」 ろうかには、ほかにも数人、工作員らしいのがいる。たぶん、ホテルのなかには、もっと大勢、ジムの部下が配備されているだろう。 逃げることは不可能だ。 サリーは銃口をわき腹に押しつけられて、歩きだした。 「ちょうどいいので、サーとミスには、このまま、チェックアウトしてもらいましょうか。くれぐれも、おかしなそぶりはしないように」 言われたとおり、チェックアウトをすます。 そこへ、正面玄関から、トウドウが入ってきた。旅じたくのサリーたちを見て、ビックリしてる。 「あれ、先生。どこへ行かれるんですか? ユーベルの手続きがすんだので、報告に来たんですけど」 ぐりぐりと銃口を押しつけられる。 サリーは、つくり笑いをうかべた。 「ああ。これで、エンデュミオンの件も片づいた。ルナ・チャイルドの市長に報告へ行こうと思ってね。ユーベルのことは君に頼むよ。だから、君も助手の任をとく。ディアナシティに帰っていいよ」 「そうか。先生と、もう、お別れなのか。さみしいですね。じゃあ、せめて、ディアナまで、ごいっしょしましょうか?」 トウドウの武術は役に立つ。 しかし、この場を逃げだしても、根本的な解決にはならない。 「いや。じつは、キャロラインと婚約したよ。それを伝えに生家へ寄っていこうと思う。ワイルダー事務次官が送ってくださるそうだ」 トウドウは変な顔をした。 とうぜんだ。トウドウはサリーが生家と、うまくいってないことを知っている。 それで、注意深い視線をなげたトウドウは、ジムの手にした銃に気づいた。 「婚約ですか! おめでとうございます。そうじゃないかなあと思ってました」と、口では言いつつ、 『銃で、おどされてますね。助けましょうか?』 テレパシーで話しかけてくる。 サリーもテレパシーで返した。 『いや。私に考えがある。このまま、私たちは、さらわれていくよ。そのかわり、君に頼みがある』
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