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「今ごろ気づくとは、トリプルAも、たいしたことありませんな」
「セラピストはノゾキ魔じゃないんだ。必要なとき以外、エンパシーは使わない」
「紳士的なことで、こっちは助かりました。いつバレるかと内心、ひやひやしておりましてね。さあ、では、行きましょうか。あなたがたを特別VIPルームへ案内しましょう」
「VIPルーム? 人体実験室のまちがいだろ? えんりょしたいね」
「大統領閣下のお招きですよ。ぜひとも、おいでください」
ろうかには、ほかにも数人、工作員らしいのがいる。たぶん、ホテルのなかには、もっと大勢、ジムの部下が配備されているだろう。
逃げることは不可能だ。
サリーは銃口をわき腹に押しつけられて、歩きだした。
「ちょうどいいので、サーとミスには、このまま、チェックアウトしてもらいましょうか。くれぐれも、おかしなそぶりはしないように」
言われたとおり、チェックアウトをすます。
そこへ、正面玄関から、トウドウが入ってきた。旅じたくのサリーたちを見て、ビックリしてる。
「あれ、先生。どこへ行かれるんですか? ユーベルの手続きがすんだので、報告に来たんですけど」
ぐりぐりと銃口を押しつけられる。
サリーは、つくり笑いをうかべた。
「ああ。これで、エンデュミオンの件も片づいた。ルナ・チャイルドの市長に報告へ行こうと思ってね。ユーベルのことは君に頼むよ。だから、君も助手の任をとく。ディアナシティに帰っていいよ」
「そうか。先生と、もう、お別れなのか。さみしいですね。じゃあ、せめて、ディアナまで、ごいっしょしましょうか?」
トウドウの武術は役に立つ。
しかし、この場を逃げだしても、根本的な解決にはならない。
「いや。じつは、キャロラインと婚約したよ。それを伝えに生家へ寄っていこうと思う。ワイルダー事務次官が送ってくださるそうだ」
トウドウは変な顔をした。
とうぜんだ。トウドウはサリーが生家と、うまくいってないことを知っている。
それで、注意深い視線をなげたトウドウは、ジムの手にした銃に気づいた。
「婚約ですか! おめでとうございます。そうじゃないかなあと思ってました」と、口では言いつつ、
『銃で、おどされてますね。助けましょうか?』
テレパシーで話しかけてくる。
サリーもテレパシーで返した。
『いや。私に考えがある。このまま、私たちは、さらわれていくよ。そのかわり、君に頼みがある』
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