エピローグ

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シェルターみたいに堅固な守り。 幸いにも、建材に鉛は使用されていない。 そこが、重要。 ハッチの電子ロックとIDコードは、やっかいだが、なんとかなるだろう。 「ーーというわけでね。我々は、サーの能力が必要なのですよ。トリプルAのサーなら、エンパシーでの記憶複写が可能ではないですか?」 「できるね。細かい部分まで完全にとはいかないだろうが」 「すばらしい。これで研究は成功したも同然だ」 「ほんとに、それが、すばらしいことかな? 強すぎるESPは、いずれ不幸を呼ぶ。 なぜなら、ESPは精神の力だからだ。それをあやつる精神が未熟なら、災いにしかならない。幼児に銃を持たせて、絶対に撃つなと言ったところで、ムリに決まってるだろ? 現に、今回のエンデュミオン・シンドロームも、七月の崩落事故も、君たちの造りだしたエスパーの起こした事件だ」 「そんなことは、この研究の前には、たいした問題ではありません。我々の研究が完成すれば、人類は永遠に生きることができる」 「永遠にね。でも、そのために、市民を勝手にエスパーに改造するなんて、やりかたが汚いよ。 たしかに、今のところ、私は健康だ。ほかのエスパーにも身体的な異常はない。だが、今後、子孫に、それが出ないという保証もない。 ミューテーションにミューテーションをかさねて造りだされたミュータント。 それが、ほんとにオリジナルのままのホモ・サピエンスと言えるだろうか? 変異残余は最初は二割でも、代をかさねれば、四割、六割と蓄積していく。あるとき、とつぜん、劇的変異のような異常を起こしてしまうかもしれない」 「そんな心配はありません。研究員が保証している」 反論するが、ジムの口調に、さっきまでの勢いはない。 そのとき、サリーたちは研究エリアについた。 ジムは自分の手首のIDでハッチをひらいた。 サリーたちを内部に通す。 そこは、さほど目新しいものじゃない。薬屋の研究所を見なれたサリーにとっては。前世で、さんざん見てきたものだ。 しかし、これを初めて見る大部分の人々には、かなり、ショッキングだったろう。食事中なら、吐いたかもしれない。 サリーは、なめまわすように、そこを見る。 どんな細部も見逃さないように。 ーーしっかり、エンパシーをつなげろ。気を強く持てーー ーーラジャー。問題なしーー
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