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ここへ来る前に仲間に頼んでおいた。大至急、全セラピスト協会員に、マインドブロックをとき、協力してくれるよう伝達してほしいと。
そして、私の送るエンパシーを、エンパシストでない人たちにも中継してほしいと。
全宇宙、四億人のエンパシストに私が映像を送る。エンパシストたちが、全宇宙の人々へと、ネットワークをつなぐ。エンパシーには、こんな使いかたもあるんだ。
私たちが、この研究所に入ってからのことは、何もかも、外に、つつぬけだったんだよ。市民は、とうぜん、怒り狂う。さすがに、各国政府も、だまっちゃいないだろうね」
サリーの言葉に呼応して、返事があった。
トウドウのテレパシーだ。
『ジャリマ先生! 大成功です。外じゃ、今、ものすごいことになってますよ。市民が集まって、ストリートを埋めつくしています。デモ行進が始まりました。
研究所のまわりは黒山の人だかり。
サイキッカーたちが、先生を救いだすために、所員と攻防をくりひろげてます。じきに、そこまで行きますよ。
エンパシストのなかには念写のできる者もいますから。さっきの映像がディスクに念写されました。
たったいま、スペースオンラインで流れだしました。これはもう、エスパーによるクーデターです』
それを、そっくり、ジムに伝えた。
「ーーだそうだ。それじゃ、私とキャロは失礼するよ」
ガックリと、ジムは床に、ひざをつく。
サリーたちは、キャロラインの力で、瞬間移動した。滑走路に出ると、へいの外の騒ぎが、そこまで聞こえてきた。
「わたしたち、すっかり有名人になっちゃったわね。きっと」
「だね。追いまわされるのも、めんどうだ」
サリーは、ここまで乗せられてきた反重力カーを見つけた。なかのトランクをとりだす。
「格納庫へ行ってくれたまえ。探査機を一台、失敬しよう。月から脱出する」
「いいけど。わたし、もう一度、ミタライワクチン飲まないと。もとの姿に戻れないわ」
「そのままでいい。そのままの君が一番、好きだ」
サリーは笑って、彼女の……エンデュミオンのほおにキスした。
格納庫に瞬間移動する。
二人のジャマをする所員はいない。無人だ。みんな、押しよせてくる人々の鎮圧に向かったのだ。
二人は格納庫のシャッターをあけ、探査機に、とびのった。コックピットのコンピューターを起動させ、行きさきをインプットする。
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