プロローグ

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クレオパトラとか、トロイのヘレネーとか、歴史の三大美女だって、エンデュミオンの前じゃ、てんで冴えないだろうね。 人間じゃないみたい。いや、悪魔なんだから、人間じゃないんだけど。 とにかく、言語に絶する美青年だと思っといてよ。説明してたら、キリないから、はしょるけどさ。 なかなか、ペルセウスに行きつかないなあ。まあ、重要人物だから、エンデュミオンのことは話しとく。 エンデュミオンは、さっき言ったとおり、悪魔の世界にも、人間の世界にも、二人といないような絶世の美貌だった。 そこを父親の闇の王に見込まれた。 この王様っていうのが、蛇の神なんだ。蛇神族ってのは、悪魔たちのなかでも嫌われ者でね。性癖が問題なんだ。 蛇神ってのは、サディストなんだ。執念深くて、陰湿だし。それに、蛇神ってのは、セックスの神様なんだよ。異性と交わって、相手の生気を吸いとってしまうっていう。 先生は、ちょっと、ふんいきが蛇神に似てるかも? 残忍で陰湿なくせに、すごく色っぽくてね。立ってるだけで、クラクラする感じ。 だから、わかるよね? そんな王様に、子どものころから虐待されて育ったエンデュミオンが、成人して、どんなやつになったか。 正気が精神異常だよね。あいつの場合。完全に、こわれちゃってるから。 ものすごい甘えん坊のくせに、冷酷だし。自堕落で子どもっぽいかと思うと、狡猾で打算的だったり。あらゆる面で二面性があるんだよ。 あいつが死んだのは、自殺なんだ。 え? 悪魔も死ぬよ。寿命は人間より、はるかに長いけどね。肉体が殺されれば、その肉体での寿命は尽きる。 何百年か何千年かすると、魂が新しい肉体をもって、生まれかわるんだけど。 エンデュミオンの自殺には、ペルセウスが関係してる。これで、やっと本題に戻った。 エンデュミオンは自分勝手なやつだから、ときどき、とんでもないことをする。まわりに大迷惑をかけるんだ。 三百さいのころに、父王を殺してね。自分の愛人の王を。べつに憎かったからじゃないよ。愛してるから。好きで好きで、たまらないから。 エンデュミオンは見ためは人間の母に似たけど、なかみは蛇神の父の血を継いだのさ。好きなものって、イジメたくなるんだ。 まあ、このときは蘇生の魔法で、父王は生きかえらせた。兄弟全部、イケニエにしてね。とんでもないでしょ?
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