第5話 エピローグ

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「発想が豊かですよねピギーさんは。クリニックの名付けも私の名付けもしてくれて。シルキーって『絹のような』って意味ですよねこれってクレープの和訳なんでしょ? ザイデは何なんですか」  するとそれまで黙していた女が手を上げた。 「ーー『絹』の、ドイツ語ですよね」  緩く巻いた長髪に真っ黒なトレンチコートを身に付けた女は、ゴブラン織の生地を張ったアンティーク・チェアに掛け、膝の上に重ねた掌に一枚の写真を持っている。   「大正解。やるねぇ」 「へええ。でもピギーさん、何でクレープなんですか。そんなに好きなんですか」 「こいつ見てるとコーフンすんだよ。薄く延ばした生地に、丹念に丹念に揚げた肉が何重にも巻かれるんだぜ。たまんねぇだろ」   じゅるりと、飢えた獣のようにヨダレをすする。 「あぁ、そ……」
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