390人が本棚に入れています
本棚に追加
「発想が豊かですよねピギーさんは。クリニックの名付けも私の名付けもしてくれて。シルキーって『絹のような』って意味ですよねこれってクレープの和訳なんでしょ? ザイデは何なんですか」
するとそれまで黙していた女が手を上げた。
「ーー『絹』の、ドイツ語ですよね」
緩く巻いた長髪に真っ黒なトレンチコートを身に付けた女は、ゴブラン織の生地を張ったアンティーク・チェアに掛け、膝の上に重ねた掌に一枚の写真を持っている。
「大正解。やるねぇ」
「へええ。でもピギーさん、何でクレープなんですか。そんなに好きなんですか」
「こいつ見てるとコーフンすんだよ。薄く延ばした生地に、丹念に丹念に揚げた肉が何重にも巻かれるんだぜ。たまんねぇだろ」
じゅるりと、飢えた獣のようにヨダレをすする。
「あぁ、そ……」
最初のコメントを投稿しよう!