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「やーい! おまえのかあちゃん、赤パンツ!!」
「光太郎のかあちゃん赤パンツ!!」
「赤パンツ! 赤パンツ!」
朝から教室中に響く赤パンツコールに対して、光太郎は耳を塞ぎながら貧乏揺すりをしている。
そんな彼の様子を見ても収まりそうにないところが子供の残酷な部分であろう。
赤パンツコールは止まらない。
「こんな学校、もうやめてやる……絶対転校してやるんだから」
光太郎は唇を噛みながら、誰にも聞こえない声で呟いた。
何故こんな下品なノリが行われるようになったのかーーそれは光太郎のクラスメイトである、陽一の一言が原因であることで間違いない。
「お前の家、毎日赤パンツ干しすぎじゃね?」
これが仮に光太郎と一対一の会話で飛び出したのならこんな風にはならなかっただろう。
しかし残念なことにこの赤パンツ発言が行われたのは、みんなの注目が集まる授業中であった。
誰もが経験したことがあるだろう。
授業中、みんながダラけてきたところで突如として飛び出す、全く授業に関係のない話。
ダラけている空気を引き戻すこともある為、教師から有り難がられることも多いあれだ。
そしてそういう場違いな発言をする人物というのは大概いつも決まった野郎になるのだが、それが光太郎のクラスでは陽一だった。
話を戻そう。
赤パンツ? こいつは何を言ってるのだろうか。
陽一の発言を聞いた時の光太郎の心情はこんなところであった。
というのも彼は女の人のパンツは全て赤い。と思っていてもおかしくない環境にいるのである。
父は彼が産まれてすぐに他界し、母と二人で暮らしている。
そして彼の母はどういう訳か、赤いパンツしか履かないという女性。
不幸にもこれらの条件が重なってしまった彼が【女の子=赤いパンツ】と思ってしまうのは仕方の無いことであったのだ。
さらに彼は黙っていることが出来ず、陽一に言葉を返してしまった。
「僕のママは女の子だし、毎日赤いパンツを履いてるんだから当たり前でしょ」
担任は顔を真っ赤にして下を向き、クラスの全員がぽかーんと口を開けたのは想像に難くないだろう。
陽一の言葉を光太郎は理解できなかったが、他の全員は光太郎の言葉を理解できなかった。
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