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「なぜこんな端末を?」とぼくは聞いた。
「まず、いくら人工知能でも指紋や目は持ってねぇからな。しかもかなり古いWi-FiやBluetoothの端末だ。レイの端末と同じ作りのものが必要になる。ってことはだ、どこかの誰かが今のネットワークや作業ドロイドを使ってここまで来たとしても、まずはこの箱の在りかを見つけるのも困難だし、見つけてもこの古い端末にはアクセス出来ない」
「しかもこの認証を解けるくらいのハッカーは世界にもあまりいませんね」とうぃるが得意気に言った。
「つまり俺らだ」
「でもなんで予め適切な端末やらおおよその位置を知っていたんだ?」
「それはな、これを埋めたやつに呼ばれたんだよ、俺らが。ま、正解にはおれとうぃるとレイ、そしてイリス」
「えっ?なぜイリスが?」
「かな、俺らの作戦には感染していないウォッチが不可欠なんだ。そこを起点に侵入するからな。つまりイリスだ。彼女はたぶん……これから会う奴が名前を付けて、感染しない仕組みを埋め込んだ」
「名前を!?どうやって?」
「うーん、それはわからない。うぃるもレイもいろいろ試してみたがわからなかった。つまり…それくらい巧妙にそして秘密裏に行われていたんだ。意味がわかるか?」
「あ、まぁ…」
つまり、誰かがわかるような仕組みであれば、誰かに悟られてしまうと言うことだろう。
それにしても、呼んだのは誰で、なんのために?
その疑問を投げ掛けようとした時、うぃるが「OKです。レイの端末から繋がるBluetoothでウィルスを送ります」と言ってサングラスを外した。
「見えた。送るわね」
後藤が古い端末を持ち直した。
「なんだ、やっぱりな」
「どうした?」
「レイ、駅に戻る。八戸へ行く。イリス、駅に行けばGPSもわかる言葉だ。GPSの電波とあらゆる通信網から変なパケットがプッシュされてこないか監視して欲しい」
『わかったわ。どうかしら?一応わたしは"女性"らしいので、レイの口調を勉強したんだけど』
「あたしを参考にしない方がいいかも」とレイがまんざらでもないって顔で言った。
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